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第二話 脱がせてください

「さあさあ、いつまでも立ち話はなんじゃて」

 私と少女のやりとりを、微笑ましそうに見ていた老人は、不意に声をかけてきました。

「それに……、上だけ脱いだままでは、和人くんも寒かろう」

 その言葉のとおりです。着替えの途中だった私は、上半身だけ脱いだ状態で、二人と話していたのでした。

「ほれ、瑠美も……、はやく脱いでしまわんかい」

 老人の発したその言葉に、やはり少女も一緒に入らせるつもりだということが、あらためてはっきりとしました。もちろん、今までの流れから、わかってはいたことでしたが、それでもやはり半信半疑だったからです。

「お爺ちゃま……」

 ですが、少女は祖父のことを見上げると、そう囁きました。

 相変わらず恥ずかしそうにしている彼女を見て、「それはそうだろう」と思う自分がいました。なにしろ、新学期には、小学校六年生になる女の子なのです。おそらくは思春期を迎えているでしょうし、今よりは格段に情報入手手段は少なかったとはいえ、それなりの知識は持っていたはずです。であるならば、男湯になど入りたがるはずがありません。そんな彼女は、そのことを祖父に伝えようとしているのだと、私は考えたのです。

「なんじゃ、瑠美?」

「お爺ちゃま……。瑠美のお洋服、脱がせてください……」

 ですが、私の予想は外れました。彼女は服を脱ぐことを拒否しませんでした。それどころか、私の予想とはまったく異なる言葉を、祖父に返したのです。

「なんじゃ、瑠美。もう六年生にもなるというに……。そんなことじゃ、みなに笑われてしまうぞ」

 そう返す老人でしたが、そのように頼まれたこと自体には、特に驚いている様子はありませんでした。そのことから、これが初めてではないということがわかります。

「でも、お爺ちゃまぁ……」

 相変わらず恥ずかしそうな、それでいてどこか甘えたような様子で、少女はそう囁きました。

「ほんに、瑠美は……。まったく、甘えんぼじゃて……」

 そこまで言った老人は、あることに思い至ったようでした。

「そうじゃ。なぁ、和人くん」

「は、はいっ!」

 急に呼びかけられた私は、少し困惑しながらも答えました。

「悪いんじゃが、やってくれんかの?」

「えっ?」

「いつもいつもじゃ、さすがの儂も叶わんて。なぁ、和人くん。脱がせてやってくれんか」

「お、オレが……、ですか?」

 想定外の流れに、さすがに狼狽している自分がいました。

「せっかく温泉にのんびりしに来たのに、これではちっとも休まらんわい。瑠美も、それでいいじゃろ、のぉ?」

 その言葉に、少女は小さいながらもはっきりと頷いたのです。

「えっ、で、でも……」

 それでも躊躇している私でしたが、彼女はそんな私の前まで進み出てくると、小さい声ながらもはっきりと告げました。

「和人お兄ちゃん……。瑠美のお洋服、脱がせてください……」

 羞恥心が芽生えていないのでしょうか。それとも、老人の言うように、とんでもない甘えんぼなのかもしれません。それはわかりませんが、少女ははっきりと、異性である私に対して、服を脱がせてくれと頼んできたのです。

 そんなお願いに、思わず生唾を飲み込んでいる自分がいました。たしかに彼女は、三日後には誕生日を迎えるとはいえ、それでもまだ十歳の女の子でした。世間一般からすれば、子供に過ぎない年齢だったかもしれません。ですが、当時の私だって、十六歳の少年に過ぎなかったのです。たった五、六歳しか離れていない女の子の服を脱がせることに、興奮するなという方が無理でした。

 それでも、やはり高校生ともなれば、最低限の常識は持ち合わせていました。それに、彼女の祖父である老人の手前もあります。いくらお願いされたこととはいえ、いきなり実行に移すことはためらわれました。

「ほ、ほんとに……、いいんですか?」

「ああ、手間をかけさせて悪いんじゃが、脱がせてやってくれんか」

 老人の承諾はあらためてとれました。承諾というよりも、あちらからのお願いといった方がよかったかもしれません。

「る、瑠美ちゃんも……いいの?」

 無言のまま、それでもはっきりと頷く少女がいました。

 今や目の前に立っている少女のことを、私はまじまじと見ていました。そんな至近距離から観察すると、やはり彼女が、もはや子供と言える体つきではないことは明らかでした。

 身長は、既にかなりの高さがありました。もちろん、私よりは低かったのですが、それでも百五十センチ近くはあったのではないでしょうか。それに、細身な体つきの中で、彼女の胸は明らかな盛り上がりを見せていました。もちろん、大人のように大きいわけではありませんが、それでも第二次性徴を迎え、日々成長している年頃の少女のものだと、服の下からもはっきりと主張していたのです。

 これは今だからわかることですが、彼女の身体的成長は、同学年の少女たちの中でも、かなり早かったのではないでしょうか。早生まれ、それも三月末ぎりぎりに生まれたにもかかわらずです。小学校六年生になろうかという女の子の体つき、という観点からすれば、まだ納得もできたかもしれません。ですが、いくらもう数日で十一歳になるとはいえ、まだ十歳でしかない女の子の体つきとしては、標準以上だったかもしれません。

 ですが、もちろん十六歳の私には、そこまでの知識はありませんでした。とはいえ、子供を着替えさせるのとは明らかに違うということは、十分に理解できていたはずです。彼女の体は既に、男子高校生に性的興奮をもたらす程に成長しているということは、明らかだったからでした。

「じゃ、じゃあ、脱がせるからね……」

 いよいよ……、という感じでそう言った私でしたが、そこでハタと手が止まってしまいました。姉妹もいなければ、異性と付き合ったこともなかった私は、女の子の服を脱がせた経験がなかったのです。

 少女が着ているのは、子供用のお出かけ着でした。ごく普通の男子高校生であった当時の私には、女の子の服の知識などなかったため、それ以上の表現はできなかったでしょう。ですが、今からすると、次のように説明できるでしょうか。

 それは、サラサラとしたごく薄いシフォン生地で作られた、ティアードスカートの長袖ワンピースでした。膝上丈ほどのスカート部分は、内蔵パニエのおかげで大きく拡がっており、それが特に印象的でした。淡い桜色の生地に、白い花模様が散りばめられており、春にふさわしいデザインだと思ったことを覚えています。そして、ティアード間と丸襟周りのフリルには白いシフォン生地が使われ、前側には同じ生地で作られた大きなくるみボタンが縦に二列並んでいたのです。

 その様を見て、私は当然のようにボタンを外そうと思ったのですが、それはどうやら本物ではないらしいということが、すぐにわかりました。いわゆる、飾りボタンだったからです。

 そのことに戸惑っている私を見て、その経験のなさに思い至ったのでしょう。老人が助け船を出してくれました。

「なんじゃ、和人くん。初めてかのぉ?」

「は、はい……」

 老人の口調は、決して馬鹿にしたものではありませんでした。それもあってか、私も素直に答えられたのだと思います。

「それじゃあ、儂が指示は出してやろう。それで、いいかね?」

「お、お願いします……」

 老人は少女の方へ向き直ると、指示を出してくれました。

「ほれ、瑠美。後ろを向きんしゃい」

「はい、お爺ちゃま……」

 その返事とともに、彼女はくるりと半回転すると、私に背中を向けました。

 それでも、まだわからない私に対して、老人があらためての指示を出してくれました。

「わからんかな? 後ろの襟もわかれておって、そこから縦に、ひだみたいなのがあるじゃろ。そこにファスナーが隠れとるんじゃよ」

 一直線に切られた少女のおかっぱ頭の裾は、襟にかからないぐらいの長さしかありませんでした。そのため、その襟はひと続きになっていないということが、すぐにわかりました。そして、老人が襞と称した白いレース飾りを左右に開いてみると、そこには隠しファスナーがあったのです。

「もう、わかったじゃろ?」

 老人のその言葉に、私は頷きました。たしかにここまで来れば、どうするかは明らかだったからです。

 もう一度、少女に確認しようかとも思いました。ですが、既に承諾はとってあるのです。そう考えた私は、そのファスナーを一気に引き下ろしました。そうすると、そのワンピースの背中側が、腰ぐらいの位置まで、大きく開くことになりました。

「袖は、片側ずつ肩から降ろしていって……。まぁ、前と後ろが逆になっただけで、自分でシャツを脱ぐ時と同じじゃよ」

 たしかに言っていることはわかりますし、そこまで言われれば方法も理解できます。ふんわりとした作りの袖を、なんとか両方とも抜いてしまうと、それだけで、ワンピースは重力に従って足元へと落ちていきました。

「ほれ、瑠美。今度は前じゃ」

 祖父の言葉に、今度は黙ったまま、少女は向きを変えました。足元には、ワンピースが拡がったままです。

「ほれ。バンザーイじゃ」

 その言葉に従って、少女は両腕を高く掲げました。まるで小さな子供のように、祖父の指示におとなしく従っていきます。

「さすがに、次はわかるじゃろうて……。なぁ、和人くん」

 その問いに、私も黙って頷きました。そこまでされれば、上半身に着ている肌着を脱がせるのだということは、明らかだったからです。

 それは、白い木綿地で作られていました。長めの丈を持ったその肌着を見て、当時の私は、ランニングシャツだと思ったはずです。もちろん、初めて見るものですし、形状は同じなのですから、無理はなかったでしょう。ですが、女の子のそれは、スリーマーと呼ばれるのだということは、今の私にはもちろんわかっています。

 そのスリーマーには、一つ特徴がありました。それも、誰が見ても一目でわかる、明らかな特徴です。その胸からお腹の部分にかけて、大きくイラストが描かれていたのです。それは、女の子向けテレビアニメのキャラクターのようでした。ようでした……というのは、当時の私は、それらを見たことがなかったからです。ですが、ファンシーキャラではないということは、なんとなくわかりました。そして、そんなカラフルなキャラクターたちは、内側からの盛り上がりのため、変形していたのです。

 もちろん、それがどういうことなのかは、理解できました。まったくの子供向けともいえる肌着が、成長途上の胸に押し上げられていたのです。そのアンバランスさに、それまで経験したことのないような、奇妙な興奮を感じたことを覚えています。

「和人お兄ちゃん……?」

 いつまでも脱がし始めない私のことを、不思議に思ったのでしょう。少女が声をかけてきました。

 その声に、現実へと引き戻された私は、少し狼狽していました。自分の淫らな心が見透かされてしまったような、そんな気がしたからです。

「そ、それじゃ、瑠美ちゃん……。脱がすからね?」

 拒否の言葉がなかったため、私はスリーマーの裾を両手でつかむと、そのまま上方向へと持ち上げていきました。そして、まずは頭の部分を引き抜いてしまうと、裏返しになったそれを、彼女の両腕からも抜いてしまったのです。バンザイをしたまま、上体を少し前方に傾けてくれたおかげで、それはたやすいことでした。

 いまや、すっかり露わとなった少女の上半身に、私は息を飲みました。彼女は、スリーマーの下に、なにも身に着けていなかったからです。

 もっとも、彼女ぐらいの年頃の少女であれば、ブラジャーやハーフトップなどを身に着けていなかったとしても、驚くほど珍しいことではなかったかもしれません。あの頃であれば、なおのことでしょうか。ですが、少なくとも当時の私は、彼女ほどの膨らみがあれば、当然のようにブラジャーをしているものと思い込んでいたのです。

 男子高校生の目の前で、第二次性徴を迎えた女の子が、裸の上半身を晒していました。そうであるならば、膨らみを見せ始めた少女の胸へと視線が向かうことは、仕方がなかったのではないでしょうか。別に、自分を擁護するわけではありませんが、健全な男子として、当然のことのように思います。

 そして私の視線は、その欲望に突き動かされ、既に移動しかけていたのです。

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