第四話 新たなる常識「女子のトイレ使用禁止と、ウンチとオシッコは教室の中の専用バケツにすることに決まりました」

「これで、杉本さん、牛島さん、琴莉ちゃ……皆野さんの三人には、教室の中で過ごすための裸になってもらいました」

 男子たちから、いっせいに大きな拍手と歓声がわき起こった。

「よっしゃー!」

「マジで裸かよ!」

 興奮した声が教室中に響き渡り、中には立ち上がってガッツポーズをする者までいる。

 一方、残りの女子たちは息を飲んだように静まり返っていた。顔を真っ青にして茫然と三人の裸体を見つめる者。唇を小刻みに震わせ、今にも泣き出しそうな者。誰一人として、言葉を発することができない。

 そんな張り詰めた空気など意にも介さない様子で、悠人は学級委員らしい口調のまま、次の爆弾を落とした。

「では次に、女子のトイレについて、どうするか決めたいと思います」

 その言葉に、恥ずかしい部分をさらしたまま気をつけの姿勢を取る三人の表情には、戸惑いが広がった。

「え……トイレ……?」

「どういうこと……?」

 教室のあちこちから、同様の思いにかられた女子たちの声が漏れた。

 悠人はそんな反応を意図的に無視し、学級委員らしい穏やかな笑みを浮かべて話を続けた。

「トイレに行くには、教室を出なければなりません。教室では裸ですから、そのたびに服を着る必要があります。時間もかかるし、あわてて着替えているうちに漏らしてしまったら、それこそ大変です」

 男子たちの間に、クスクスとした笑いが広がる。

「そこで提案です。女子はトイレの使用を禁止します。その代わり、教室の中に専用のバケツを用意します。それを『女子専用便器』にすれば、わざわざ教室を出たり、服を着たりする手間もなく、すぐにオシッコもウンチもできるようになります。女子のみなさんにとっても、そのほうがずっと楽ですよね」

 その理屈は、どう考えてもこじつけだった。

 もちろんこれは、女子への配慮などではない。思いやりを装いながら、さらに深い羞恥と屈辱を与えるための、欺瞞に満ちた提案だった。

 教室は一瞬、水を打ったように静まり返った。

 だが次の瞬間、男子たちから、驚きと興奮が入り混じったどよめきが起こる。

「マジで?」

「バケツに……?」

「すげぇ恥ずかしいじゃん……」

 一方の女子たちは、信じられないというよりは、理解が追いつかない様子だった。いや、理解したくないと言ったほうが正確なのだろう。

「それでは、特に反対もないようなので、女子のトイレ使用禁止と、ウンチとオシッコは教室の中の専用バケツにすることに決まりました」

 もちろん、悠人の提案に反対できる者などいない。男子たちからふたたび大きな拍手がわき起こる。

 そんな中、不意に梨枝が動いた。気をつけの姿勢を保つよう言いつけられていたにもかかわらず、それを破って黒板に向かって歩き出す。

(ひょっとして、チカラが解けてしまったのか……?)

 悠人の胸に、一瞬だけ緊張が走る。

 だが、そんな幼なじみを鋭く睨みつけつつも、梨枝の足取りはごく自然だった。そして迷うことなくチョークを握り、きれいな文字でこう書いた。

『トイレの使用禁止』

『うんちとおしっこは教室の中でせんようのバケツにする』

 白いチョークの文字を見て、悠人は確信した。チカラが解けたどころか、書き換えた「常識」が梨枝の中にますます深く根付いていることを。

 梨枝はふたたび、みるくと琴莉の隣へと戻ってきた。その表情は相変わらずくやしげで耳の先まで赤く染まっていたが、しっかりと気をつけの姿勢を取り、クラスのみんなに向き直る。

 悠人は男子に指示して、掃除ロッカーからバケツを一つ持ってこさせた。そのバケツには、太いフェルトペンで「6-1」と書かれている。これまで、掃除の時間に使われてきたものだ。

「これを、今日から女子専用便器にします」

 男子たちの間にふたたびクスクスといった笑いが広がる。

 悠人は梨枝を見つめ、穏やかな声で言った。

「では、掃除用のものと間違えないように、『女子専用便器』と書いておいてください」

 梨枝は厳しい目つきのまま、それでも「言いなり」どおりにバケツを受け取る。そして黒いフェルトペンを使って、整った美しい字で「女子専用便器」と書き加えた。

 こうして、何の変哲もないブリキのバケツが、女子たちの使う「便器」となった。

「じゃあ、早速使ってもらいましょう」

 事もなげに悠人が言うと、男子たちからどよめきが起こった。

 一方、残りの女子たちは顔面蒼白だ。行く末を思って涙をこぼす者、唇を震わせながらうつむく者、茫然と宙を見つめる者、そして力が抜けたように机へ突っ伏し、抜け殻のようになっている者……いずれにせよ、一様に絶望していることはまちがいない。

 悠人は、梨枝に視線を向けた。

「まずは、杉本さんにウンチをしてもらおうと思います」

 学級委員として、みなにそう言った悠人は、改めて梨枝本人に言い渡す。

「なぁ、梨枝。ウンチ、したいよね?」

 梨枝の顔からは、怒りやくやしさの感情は消え失せていた。代わりに、底知れない羞恥が完全に覆っていた。「そんなことできない」という思いが、潤んだ瞳と震える唇から痛いほどつたわってくる。

 しかし悠人は、冷たくじっと見つめながら、改めて言った。

「ウンチ、するでしょ?」

 その言葉で決定だった。新たな「常識」に塗り替えられた梨枝は、涙目になりながらも、ゆっくりと小さく頷いた。

 震える足でバケツへと移動した梨枝は、両脚を大きく開いてその上にしゃがみ込んだ。うっすらと生えた黒い陰毛の下に見える薄いピンク色の縦割れが、教室中の男子たちの視線にさらされる。秘裂の奥まで見えそうな卑猥な姿勢に、彼女の全身が激しく震えた。

 唇をきつく噛み、顔を真っ赤に染めながら、梨枝は下腹部に力を込める。

「うっ……くぅ……っ、んんっ……!」

 恥ずかしさで全身が強張り、なかなか出ない。額に汗が浮かび、太ももが小刻みにふるえる。

 やがて肛門がゆっくりと開き、太い便が顔を出し始めた。

 ミチミチッ……という生々しい音とともに、最初の大きな塊がバケツの中に落ちる。

 続いて二つ目、さらに三つ目……。

 梨枝は必死に声を殺そうとしたが、喉の奥から小さな嗚咽が漏れてしまう。

 教室中に、むせ返るような悪臭が立ち込めていった。

「くっせーっ!」

「マジで臭っ!」

「なに食ったんだよ、オマエ」

 男子たちからは、次々とからかいの声が飛ぶ。だが、その一方で、目を輝かせながら、その身を乗り出し、食い入るように見つめている者も少なくなかった。

 その視線が、自分の死ぬほど恥ずかしい行為へ集中していることを、梨枝は痛いほど感じていた。それでも、底なしの羞恥に包まれながら、ただ必死にウンチを出し続けるしかなかった。

 実際には、どれほどの時間が過ぎたのだろう。せいぜい一分にも満たなかったはずだ。しかし、梨枝には永遠にも思えるほど長く感じられた。

 ようやくすべてを出し終えると、力尽きたようによろよろと立ち上がる。足元はおぼつかないうえ、膝は今にも崩れ落ちそうなほど激しく震えていた。

「ほら、ちゃんと拭きなよ。お尻にウンチが残ったままだと、臭くてたまらないから」

 悠人はいたわるような口調でそう言った。しかし、その目は愉快そうに細められている。

 梨枝は震える手で紙を受け取り、おぼつかない手つきで肛門周りに残ったウンチを拭い始めた。その動きは、まるで糸の切れかけた人形のようにぎこちない。少しごわついた紙が敏感な部分をこするたびに、こらえていたみじめさが込み上げ、残っていた涙がぽろぽろと頰をつたって落ちた。

 それでも梨枝は、悠人の「言いなり」になるべく、ふらつく足でふたたび気をつけの姿勢を取る。そして正面をまっすぐ見据えた。

 だが、その瞳には、もう生気は残っていなかった。

 魂が抜け落ちたような虚ろな表情。涙と汗で濡れた頰は乱れ、引きつった口元もぴくりとも動かない。自らのひり出したウンチの匂いに包まれながら、ただみじめに立ち尽くしていた。

 次に呼ばれたのはみるくだった。

「牛島さんにはオシッコをしてもらいます」

 学級委員としてクラスのみんなにそう告げた悠人。そして、みるく本人に対して付け加えた。

「あっ、立ったままでだよ、みるくちゃん」

 みるくは顔を真っ赤に染めながら、巨大な爆乳を重たげに揺らしてバケツの後ろに立った。そして、恥ずかしそうに脚を少し開き、腰を前に突き出すような格好になる。ツルンとした無毛の股間が、教室中の男子たちの視線にさらされた。

 やはり、最初はなかなか出なかった。みるくは目を固く閉じ、歯を食いしばり、細い肩を小刻みに震わせている。

 だが、とうとう意を決したのだろう。それとも、もはや我慢できなかったのかもしれない。いずれにせよ、薄黄色い液体が唐突に噴き出した。

 その勢いは予想以上に強く、尿がバケツの底に激しく当たる音が教室中に響き渡った。しかし両側の肉厚の陰唇にはばまれる尿も多く、一部は白い太ももを伝って滴り落ち、一部は狙いを大きく外れて教室の床を無残に濡らしていった。

「もっとおま○こを開かないと。はら、くぱぁって開いて」

 そんな悠人の「言いなり」になるべく、みるくは右手をおま○この右の丘に、左手をおま○この左の丘に添えた。そして、左右に大きく割り開く。そうしてしまえば、薄いピンク色の内側の襞や尿道口まで、くっきりとあらわになってしまう。

 すでに梨枝のウンチが入っているバケツの中に、みるくのオシッコが勢いよく注がれていく。ジョボジョボという音がするにつれ、バケツの中に尿が溜まっていくことが、教室中の全員に生々しく伝わった。

「うわっ……」

「マジかよ……女なのに立ちション……」

 男子たちから、興奮と軽蔑が入り混じったざわめきが上がる。

 もはや死にたいほどの羞恥に耐えながら、みるくは腰の位置をたびたび微調整しつつ、最後のひとしずくまで出し切った。

「あーあっ、みるくちゃん。太もももそうだけど、せっかく真っ白だった靴下や上履きも、少し黄色く染まっちゃってるよ。それに、床にも飛び散っちゃってるし」

 みるくは、茫然とした表情で、悠人の声をただ聞いていた。

「もっと練習しなきゃダメだね。あっ、他の女子も同じだからね」

 その、あまりにも軽い口調での宣告が下された瞬間、教室の空気が凍りついた。席に着いていた女子たちは、自分たちもまったく同じ屈辱を強制される運命を突きつけられ、顔から血の気が引くと同時に、羞恥が一気に込み上げた。

「はい、みるくちゃん。トイレットペーパーをロールごと渡すから、おま○こだけじゃなくて、濡らしちゃった太ももと、なにより床もきれいに拭いてね」

 手渡されたペーパーで、みるくはまず濡れそぼった股間を拭った。指先が小刻みに震えている。次に白い太ももを何度も往復し、ロリータ風の靴下と上履きに染み込んだ尿を必死に吸い取ろうとする。

 特に靴下には強い愛着があった。染みついた汚れが元には戻らないとわかっていても、現実を受け入れられないかのように、同じ箇所を何度も何度もこすり続けた。指先を震わせながら、惨状を少しでも消し去ろうとする必死な姿は、かえってみるくのみじめさを際立たせていた。

 やがて、教室という場所のせいか、それとも極限状態での思考停止のせいか、思わず掃除の時間に床を拭くような姿勢を取ってしまう。四つん這いになり、腰を高く突き上げ、手のひらを床につけたまま前傾姿勢になる。

 その瞬間、支えのない爆乳が重たげに垂れ下がり、自らが汚した床に触れた。もはや、トイレットペーパーで拭いているのか、たわわな乳房で拭いているのかもわからない状況のまま、バケツの周りを何周も這いまわった。

「もういいよ、みるくちゃん。お疲れ様」

 みるくはふらつく足取りで梨枝の隣に戻り、ふたたび気をつけの姿勢を取った。しかしその姿は、魂を削られたように力なく、ただ教室の視線にさらされ続けるだけの、みじめな存在に見えた。

 最後に、琴莉が呼ばれた。

「琴莉ちゃんもオシッコだけど……まだ一人では難しいかなぁ?」

 悠人はわざとやさしい、赤ちゃんをあやすような口調で言った。もちろん、そんなことはないと重々承知のうえだ。

 琴莉は小さく首を横に振ったが、悠人がじっと見つめ続けると、結局はうつむいてしまう。

「だから、クマさんに手伝ってもらおうね」

 ほほえみながらそう言った悠人は、熊田へと振り返った。

「熊田くん、またお願いね。琴莉ちゃんのこと、赤ちゃんみたいに抱きかかえて、オシッコさせてあげて」

 熊田は穏やかな表情でうなずくと、自分の席から立ち上がる。そして、琴莉の後ろに回り込み、大きな両手で彼女の細い身体をやさしく抱き上げた。

 両太ももをしっかりと支えられ、琴莉の小さな身体はあっというまに浮かされた。ツルツルとした幼いおま○こが、教室中の視線に丸見えになる格好で固定された。

「さあ、琴莉ちゃん。ちー、ちー、しようね」

 熊田の低くてやさしい声は、琴莉にはまるでお世話をしてくれるお兄さんのように聞こえた。

 だが、琴莉はどうしてもおしっこを出せない。

 もう六年生なのに……。こんな風に抱きかかえられて、オシッコさせられるほど小さくないのに……。そんな思いが、胸の奥に広がっていく。

 そんな様子を、急かすでもなく穏やかに見つめていた熊田は、ふと視線を下に落として微笑んだ。

「クマの靴下なんだね。琴莉ちゃんによく似合ってるよ」

 抱きかかえたまま、熊田が穏やかに声をかける。

「ありがとう……。琴莉、クマさん、大好きなの……」

 そこまで言って、琴莉は「あっ」というように目を丸くした。

「ううん、そうじゃなくって。クマさんっていうのは……。でも……クマさんも好きだよ……」

 もちろん、それが恋愛感情ではないことは熊田にもわかっていた。それでも、その言葉は胸の奥をじんわりと温かくしてくれる。

「ありがとう、琴莉ちゃん」

 熊田はほほえみながら、琴莉を見つめた。

 M字開脚に抱きかかえられたまま、琴莉も少しだけ顔を上げ、熊田を見上げる。そして、照れくさそうにはにかんだ。

 大きな温もりに包まれているうちに、琴莉の身体から少しずつ力が抜けていく。そして安心したようにうなずくと、そっとおま○こをゆるめた。

 チョロ、チョロ、チョロ……

 透明な尿が、ゆっくりと弧を描いてバケツの中に落ちていく。最初は途切れ途切れだったが、熊田が「大丈夫だよ」とやさしくささやき続けると、琴莉はすっかり安心した表情になり、最後の一滴までを素直に出し切った。

「じゃあ、琴莉ちゃん。ふきふきしようね」

 オシッコが終わると、熊田は琴莉をそっと床へ下ろし、自分のほうへ向き直らせた。そして、トイレットペーパーを手に取ると、小さな妹の世話をするようなやさしい手つきで、閉じきった割れ目をていねいに拭いてあげる。

 琴莉は抵抗しなかった。ただ、おとなしく身を任せていた。

「……クマさん、ありがとう」

 か細い声だった。それでも、その一言にはたしかな気持ちが込められていた。

 先ほどまで怯えに揺れていた瞳にも、少しずつ変化が生まれていた。恐怖は薄れ、その代わりに、熊田を頼るような色が静かに宿り始めている。

 やがて琴莉は、くるみの隣へ戻ると、体育の授業で教わったとおりに背筋を伸ばし、ピンと気をつけの姿勢を取った。

 それでも、ときおり熊田のほうをチラリと見てしまう。そこにちゃんといてくれることを確かめるような視線だった。その姿が、安心できるお兄さんの姿を何度も確かめる幼い子どもを思わせた。

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